2018年3月28日から4日間、深圳市で深圳国際機械製造工業展覧会(SIMM)が開催された。
毎年、製造業の集積地である深圳で開催され、今年で19回目となる。
私も毎年視察や出展等で、深圳の機械製造の歴史を15回見てきたことになる。
年間百数十社を訪問する私も、深圳の市場を俯瞰でみれるチャンスなので、
欠かさず視察するようにしている。
今年は、出展社数1215社、来場者数13.4万人と発表された。
日本で開催のJIMTOFは970社、14.7万人なので、同等規模のものである。

今年は大きく3つのカテゴリーに分けられる。
・工作・鍛造機械展
・ロボットおよびスマートファクトリー展
・要素部品・材料展
毎年、市場の変化や技術の進歩により、展示される物が変わるので、
そこからみる深圳を中心とした華南地区の製造状況が把握できる。
今年のポイントとしては、
1、ロボット
2、スマートファクトリー
3、板金加工
4、金型加工機械の減少
の4つを主に感じた。
1、ロボット
中国製造2025という国策によって、製造の自動化投資に多額の補助金が出された事により、
猫も杓子も自動化にわき始めたのが3年ほど前。
ただ、実際に設計、調達、組立をするインテグレーター(いわゆる自動機器メーカー)が、
きちんと育っていない事もあり、日本の自動化と比べると、
精度、タクト、サイズも一ケタ違うようなものであった。
何度か「この工程でなんでこんな大きい機械を作るの?」と思ったことがあった。
ロボットの展示も4,5年前から漸く、あちこちで見ることになったが、
今回は、日系主要メーカーがほとんど出ており、
多分、彼らがきちんと指導したインテグレーターのデモ設備が多く見られた。
自動機の供給面での体制も基盤ができつつある状況だと思う。
ユーザー側の需要面でも、
・人件費の高騰および人材(ワーカー)不足
・工場用地の高騰(→省スペース化)
・自動化への理解
・余剰資金の投資先
という理由があり、自動化を検討する会社がだいぶ増えてきた。
この流れに乗じて、雨後のたけのこのように、
インテグレーターやロボットメーカー、サーボモーターや制御システムなどの要素部品メーカーが、
氾濫しており、
ユーザーの加工工程を理解し、経験もあるインテグレーターや設備メーカーを探し出せるかどうかが、
必要となる。
実際、スカラロボットや6軸可動ロボットなどは、日系よりも金額の高いメーカーもあり、
さらに、梱包箱をパレットに置く程度のハンドリングしかできない、というものも多い。

2、スマートファクトリー
中国政府でも「工業4.0」と称して、スマートファクトリー化を推進している。
日本と同様、設備の稼働状況の可視化とデータ化がメインであるが、
システムウェア専業メーカーが出展している事もあり、
前述の自動化とうまくリンクされて視察できるようになっている。
(JIMTOFは、その点、業界の垣根がある出展形態だと思う)
ただ、可視化してデータ化したものをどのように改善するかというのが日本市場ではポイントであるが、
中国では、基本的に作業者の監視のためであったりもする。
監視は、中国の習慣では非常に必要なものであるが、これ以上の目的を提示できていないメーカーが多かった。
ただ、現地でたまたま会った客先の社長(香港系)は、
自動化とスマートファクトリー化を合わせて、
日本で出来て、中国ではなかなか出来なかった機械の多台持ちができ、
2年後には無人化する、といって社内に自動化部門を設立したと言っていた。

3、板金加工
レーザー加工、タレットパンチプレス、ベンダーなどの板金加工機械メーカーの出展が非常に増えた。
4,5年前まではATMなどのユーザー向けがほとんどであり、
そのATM自体、スマートフォン決済により、ほとんど売れなくなってしまっている。
どのようなユーザーが多いか聞くと、
クレーンゲーム、カラオケBOX、レンタル充電機器、配達BOX、自動販売機などへの納品が多いとのことだった。
これらの製品は、ほとんどスマホで決済・操作できる商品である。
中国は、日本と違い、紙幣の汚れ・欠損、更に偽札が多く、
現金の自動識別・処理装置はほとんどが日系メーカーのものであった。
その日系メーカーも、中国での装置は日本より精度を要すると、ある技術者に聞いた事があった。
スマホ決済により、その精密な装置を必要としなくなり、デジタルで処理できる機能のみで使用できる商品が市場に瞬く間に浸透していった。
いまや、配達BOXはほとんどのマンションに設置されており、
レンタル充電機器BOXもレストランに置かれ、
私のマンションの下にはクレーンゲームとカラオケBOXが5台ずつ置かれるようになった。
板金業界は、現金決済のユーザーが無くなったあと、スマホ決済のユーザーに乗り換えて、
市場を拡大していると思うと、多少複雑な気持ちになる。
4、金型加工機械の減少
一方、勢いが弱いのがプレスなどの鍛圧機械や、放電加工、マシニングセンター(MC)などの、
今まで主流だった機械業界だ。
理由としては、主に次の二つを考えられる。
・IT、事務機器などを主とした深圳地域でのプレスの需要が飽和しており、
プレスメーカーとしては、活況な自動車産業を主とした広州地区へ力を入れていること。
(深圳にも電気自動車のBYDやPSAなどの完成車メーカーがあるが、広州市場と比べると、やはり小さい)
同様にプレス金型メーカーも、自動車向けは活況であるが、やはり広州メインである。
・直近の技術革新を見せ終わった。
たとえば、サーボプレスや5軸MCなど。
中国製でも精度、耐久性はともかく、サーボ、5軸の製品を出しており、
その後のインパクトのあるような真新しい製品がない。
但し、板金加工機械、自動化機械を比べて、勢いが無いのであって、景気が悪いわけではない。
スマホケースの仕上げ用MCを製造している中国系メーカーや、
精密コネクタ金型部品の加工機械メーカー(日系)の鼻息はかなり荒かった。
それ以外のメーカーもロボットでのハンドリングと合わせて、
ワークの出し入れによる機械の無人稼動や、
切削加工後のロボット研磨などを自動化にあわせ、提案していた。
以上。